四方田

によるサスケの評価は低い。確かに画の統一性は見られないし、各挿話の多くは、他の短編で使われたものを寄せ集めたものである。更にラストはカムイ伝忍者武芸帳と同様に一揆崩れの悲惨なものであるが、他の作品程凄惨な結末にはなっていない。寧ろ、小猿を探して彷徨うサスケを見送る柳生十兵衛と死巻のバックを大きく描いたラストはチャイコフスキーの悲愴のラストを思わせる余韻を残した優れたものになっている。サスケでは1巻で母が殺され、12巻で父が爆死する等、悲惨な話が多いものの、カムイ伝忍者武芸帳のような救いのない凄惨さはなく、それ故に娯楽性を残した佳品になっている。また、多くの挿話のダイジェストの寄せ集めという構成故に、逆に全盛期の白土の思想のエッセンスをうまく伝えている。それ故に、私の中でのサスケの評価は高い。(勿論、サスケが入門であったという面で贔屓目に見ているのは間違いない)。