カムイ伝

について、多くを語る必要はないであろう。カムイ伝(第一部)は多くの人が指摘するように、そのパート3からはカムイは全く出てこず、全体を通しても「正助伝」と呼ぶに相応しい作品であろう。また過度にマルキズムが前面に出て、くどいまでの農本主義と、対武士、対商人に対する一揆の悲惨な結末を描き、全体に救いがない。高橋和巳邪宗門と似たような左翼的なユートピア思想は現代とマッチせず、全体として失敗作であると言って良いだろう。しかし、その失敗にも拘わらず、白土の作品の中のみならず、全ての日本漫画の中で最高峰と呼ぶに相応しい作品である。