「CIA秘録:その誕生から今日まで」T. ワイナー著藤田他訳(文藝春秋社)

 CIAが誕生から今日まで如何に秘密工作に奔走し、その多くは失敗に終わった、ということを余すことなく描いた問題の書。SFとは異なり官僚的スパイ組織の宿命なのか、多くの失敗はある種の必然を伴っており、それが改善されることなく、最近のイラク侵攻のきかけになった大量破壊兵器の存在の誤認に迄至る。また日本人にとっては訳書で書き加えられた児玉誉士夫を通した諜報と政局のコントロールは目新しく映ったかもしれない。しかし実の処、立花隆の「田中角栄研究」に遥か昔に書かれている内容であり、驚くような内容ではない。