学位論文提出

齊藤君の学位論文を受け取った。明日の会議で審査要件を充たすかどうかをチェックした後、年末に公聴会を開くことになるだろう。学位論文は学生の今迄やってきたことの集大成だけに提出には感慨があるが、齊藤君は修士号取得後に2年間の会社勤めをしてから再度大学院に戻っただけに感慨もひとしおであろう。

 彼は修士課程で粉体せん断流の質の高い研究を行い、それをまとめた論文はある程度この分野で知られたものとなっている。復帰後はナノクラスターの統計力学の研究を志し、運良く実績がない段階で書いた学振の申請書が評価されて学振特別研究員に採用される幸運も手伝い、順調に研究を進め、3つの論文を出版し学位論文の提出にこぎつけた。勿論、順調一方ではなく、最初は色々なテーマに手を出して何れも中途半端に終わった。特にクラスターの衝突に伴う分裂はコードや動画は完成し、後は解析して理論を考えるだけだったがお蔵入りになった。またPTPに出版した論文では「解析は申し分ないし面白いが基盤のLJ固体はあり得ない」との理由でPRBにrejectされた。グラフェンの論文も最初はレターに投稿したがPRB regular articleとして出版されている。しかし、総体的に見て順調に研究をこなし、予想以上の成果を挙げて、国際会議も主宰し、国際舞台で活躍すべくStefan Ludingの下でポスドクをすることになった。今後の更なる飛躍を期待したい。

 学位論文の後も彼は忙しい。まずは修士論文の続きでもあるせん断粉体流の弱非線形解析の論文を完成し、投稿しないといけない。元の予定では学位論文の参考論文として投稿済みの筈だったが国際会議の10日程前に致命的なミスに気が付き、トークのキャンセルやむなしというぎりぎりのところで誤りを正すことに成功した。学位論文はある意味楽勝だったが、この訂正が彼にとって修羅場だったと思う。また、MSMSEという雑誌からグラフェン関係の招待論文を依頼されているので全力を挙げて投稿迄持っていきたい。勿論、オランダで継続する研究計画にも枚挙に暇がない。今後、どのように育っていくか楽しみである。