昨日、各省庁が要望額で出した政策コンテスト(元気な日本復活特別枠に関する評価会議)の結果発表があり、文部科学省関係の申請は全てB評価、C評価の憂き目を見た。政策コンテストへのパブリックコメント文科省関係が圧倒的に多く、その事業を支える声が高まっていたが無視された格好である。また、文部科学省の要望については「要求で一旦、形式的に廃止した扱いにした上で、増額要望していること、また、その結果、金額的にも全府省要望総額の3割を占める要望となっていることから、「特別枠」の趣旨に照らして問題が大きい。したがって、文部科学省については、全般的に大幅な要望の圧縮と、要求の削減による新たな財源捻出が必要」という異例のコメントをつけられる始末である。今回、文科省民主党政権下での予算大幅カットに対抗するためにベースとなる要求額を少なくし、特別枠への要望へ多くの予算の復活を賭けた訳だが、そのギャンブルは裏目に出たようである。文字通りギャンブルであればこれでゲームオーバーであるが、これから大学運営なり、研究環境の維持、整備をしていく我々は大変である。もっと大変なのは、若手の研究者、ポスドクであろう。例えば10月末にあった学振PDの発表は内定者ゼロで、832人もの人が凍結扱いになってこの政策コンテストに賭けていたが、C判定に終わり、例年400強ということを考えれば300程度しか採用されないであろう。

 そもそもポスドクの増員計画が出始めた頃から今回の破綻は見えていたのであろう。しかし大学院重点化以降、改組に次ぐ改組、競争的資金の申請と運営に倦み疲れて、挙句の果てに疲弊した大学教員の生産性の低下をもたらした中でポスドクは研究面に活力をもたらし、実質的に研究を担ってきた中心的な存在であった。一方で、世界的に見てもポスドクが科学研究を支えている現状では、世界と伍していくことを諦めろと宣言されたに等しい、「元気をなくす日本特別枠の評価」でもあった。今後、どうなっていくのであろうか暗澹たる気持ちに捉われる。

 勿論、運営費交付金の関係も大幅カットは避けられない。一時、来年の予算は10%カットというニュースが流れていたが、1月程前には4.8%程度ではないかという推測がまことしやかに囁かれていた。しかし政策コンテストの惨敗で運営費交付金への皺寄せは最早避けることは出来ず、10%近い削減が現実のものになるかもしれない。恐ろしいのは既に法人化以降に削減されてきた中で、これから3年程度は一定の逓減率で予算をカットするということを表明している点である。仮に10%カットを3年続けたら現在の73%弱の予算しかないことになる。既に著名な大学(東京にある国立女子大)でもPhysical Reviewを図書館で購入できない程、追い込まれているのに、今回の削減が現実のものになれば大学に倒産しろと言っているようなものである。

 政府の本音は少子化の中、多すぎる大学を整理、統合して予算をカットしたいというところにあるのであろう。しかしもともと諸外国に比べて予算措置が十分でない高等教育に対して短絡的に予算の大幅カットを決断することで、大学や学術・研究を潰すことに熱中している様は一種、異様に映る。明日が見えない。どこに向かっているのだろうか。