もうサイエンスプログラムは終わったも同然で、本日はポスターセッションしかないために当初の目論見通りエルミタージュ美術館に行こうと計画した。一人だったら心細かったが、首都大学の3人も一緒だったので心強い、と思ったのが全て落とし穴だった。

 3人はチェックアウトの手続きもあったので約束の時間より遅れて9時半くらいに出発。バスは混んでいただけでなく、途中から交通渋滞に遭遇し、1時間半近くかかった。フィンランド駅で地下鉄に乗り込んだ。水深の深いネヴァ川の下を通るだけにエスカレーターが信じられないくらい長く、深いところを走っている。2駅で乗り換え、マリコフスカヤ駅で乗り込むときに事件は起こった。日本のラッシュにもないくらい妙に混んでおり、変な挙動をした男もいたので上からポーチ等を抑えていたのだが、降車後、M先生が「やられました」と青ざめた表情をしていた。またFさんもやられたという。急いで確認すると僕のポーチも開けられている。パスポート、航空機チケット、こちらでの現金、TC等はあるので大丈夫かなとも思ったのだが、妙に軽く、何か足りない。ようやく日本のお金を入れた財布を掏られたことに気がついた。(11時半頃)

財布の中には、日本円の他、クレジットカード、銀行のカード、免許証、アメリカのsocial security card等が入っていたことは確実で、また職員証も入っていたと思われる。青くなっていたが、携帯電話を借りて、日本の家族に連絡してカード類の使用をストップして貰う手続きを取った。持つべきは携帯である。今後は考えないといけない。被害にあったお間抜け3人組が警察に行くか領事館に行くかを議論した結果、とりあえず領事館に行くことにした。場所はエルミタージュのすぐ脇で、もともとの目的地を名残惜しく横目にして領事館に行く。領事館もロシア語が分からないせいもあって、なかなか入れて貰えず、苦労もあったが、最終的に副領事の方が対応して下さった。彼によるとこの手の被害は今年に入ってから少なくとも5件はあり、(中途半端に事情通ぶる)学会関係者の被害が多いとのことであった。手口はまず一人が地下鉄の奥にいかないようにブロックをして、後ろの連中が圧縮するように近づき掏るというものである。気をつけていたつもりだったが、迂闊にも不審者集団に気がつかなかった。手続きの最中に家族から連絡があり、CITI Bankの確認を本人がしろとのことだったが、副領事の方に手伝って頂き助かった。

結局、通訳の女性を紹介して頂いて警察に向かったのが2時過ぎ。警察は係の人がいないということなので近所で昼食を取ってからもう一回戻る。建物は一見してそれと分からない構造になっており、非常にぼろい。長い時間待たされた間に手錠をしている男の出入りもあった。事情聴取の間、3人も被害にあったせいか東洋系の係官は苦笑していた。また盗難を実証できないので盗難証明ではなく、盗難申告と紛失証明を書いて貰うことになった。結局全てが終わったら5時。通訳の方に対価を払い、御礼をして分かれた後、おそるおそる地下鉄に乗り、それから列車に乗ってホテルに戻った。

ホテルではCo-chairmanに会い、お世辞ながら昨日の講演を面白いとほめてくれた。しかしカードキーが効かない。また部屋に入ったらベッドメークはしていないで踏んだり蹴ったりであった。

 Banquet前にPoeschelの実験とモード解析のpreliminary resultsを教えて貰う。驚くべきか当たり前というか反発係数1を超えるイベントはミリメータサイズのマクロ球でも観測した例があるということ。モード解析は8年前からやるべしとして中途半端な結果のために放置していた。急いでまとめる必要がありそうである。Banquetは歩いて10分程のところにある近所のホテルで行われた。こういう催しは苦手で話し相手に苦労するかと思ったが、道すがらはBrilliantovとパーティーの最初は彼の学生と、それからBrilliantov夫妻と喋った後、Spahn, Poeschelのテーブルに混ぜてもらい、その後、そこに人が集まって大きなクラスターが出来たこともあって話し相手には苦労しなかった。既述の人の他、Tomasや、ブラジル人のアンナとよく話した。Banquetは12時過ぎまで続き、SpahnとTomasにビールを飲まないかと誘われたのを機に席を立った。途中雨に降られたりしたが、ホテルに着くと自然解散で、疲れている身には有難かった。ハチャメチャな会議も今度こそ殆ど終わりである