今日は

H. G. Wellsの子孫であるJohn Wells(立命館)のセミナーだった。このセミナーで彼は粘性流体中で粒子が衝突可能かというパラドックスに正面から取り組んだ研究成果を報告してくれた。少なくともStokes流の厳密解では互いに慣性を持って近づくハードコア球はギャップに反比例する抵抗を感じて、結局衝突直前に止まってしまうということになっている。何を隠そう、私もこのパラドックスにいちきさんが学位論文を取る前に遭遇し、解決を見ないまま終わったという曰くつきのものであった。このパラドックスを回避するには表面の凸凹を陽に考えるか、流体の圧縮性が無視できなくなるのか、凸凹のスケールでは流体力学は使えないのか、実際の球はハードコアではなくギャップにたまった流体の圧力上昇のために球が変形するためなのかまだ明確な説明はない。Wellsはその最後のケースについて詳細に調べた結果を報告した。まず驚いたのは彼のセミナーではくわしく説明されていなかったが流体方程式と変形をきっちり解いた研究が既に1986年に発表されており、その結果は正しく粒子が衝突して反発し得るというものであった点である。一方Wellsは球のギャップの発展方程式という少数(3)自由度の常微分方程式に落として球を衝突、反発させようとしているが、未だ完全な解を得ていないようであった。自由度を幾つにすればこの古典的パラドックスが回避できるのか興味は尽きない。