1/24 会議2日目:

幾つか面白い話があり、来た甲斐があると思わせた。Ken Kamrinは如何にもMITの秀才っぽい感じで自信たっぷりで面白い粉体の連続体力学の提案をしていた。特にせん断率が臨界摩擦係数からの差に比例し、せん断率と摩擦係数の比がfluidityになっているという話に興味を覚えた。因みに彼とはバンケットの折に隣になり、すっかり仲良くなった。彼とはグラーツで再会する予定である。北京にも来るようだ。

またKhakharのsegregationの単純な一粒子描像に基づくモデル解析もあまりにうまく行っているためにその詳細を知りたくなる。勿論、多体効果は粘性率等の輸送係数には現れているのだが。

2日目で最も面白かったのはDijksmanの講演である。前にvan Heckeが紹介していた話を発展させたもので、粉体層の下を回転させてレオロジーがどう変化するかについて論じていたが、粒径と無関係で圧力と密度、重力加速度のみに依存する新しいタイムスケールを導入していたのが最も興味を引いた。

夕食はLuding, Poeschelと取る。どうも英語が下手で会話が弾まず、うんざりする。

1/25: 3日目

いきなりSundaresanが我々のジャミングの研究を紹介し、殆ど後追いとしか思えないような話を含めて興味深い話をしていた。(Ludingの講演にも出てきていて我々もその存在を気が付いている)臨界摩擦係数は何なのだろうか。(後でフランスのAzemaから我々はその理由を分かっているとして幾つか論文を貰ったがざっと見た感じでは良く分からない)。やはり高密度粉体のレオロジーは面白い。

N. Grayの話は流石にうまく斜面流の偏析を流体モデルのきれいな解析で説明している。巨大実験、数値計算、理論のタイアップは完璧で隙がない。(勿論、あやしい処は隠していると云う事は後で彼から聞いた)。Vriendも似たタイプの斜面流の実験、シミュレーション、理論の解析だが、理論のモデル説明がなく紛糾していた。

午後になると準備が必要になった。Kumaranが急に私が、揺らぎの定理関係を喋る筈と紹介したので焦って2枚を追加した。しかし結局その2枚に触れる時間はなかった。また事前にチェックすると周波数の違いかスクリーンに投影出来ず頭に来た。結局USBにコピーして講演することになった。

講演は慣れない外部コントロールのスライド送りをやって失敗ばかりしたせいもあって時間が少々足りなくなった。反応はもう一つ。弱非線形解析に馴染みがない人が多いのか?摂動論の大家のHinchも居たのだが。私の後のLudingは何時ものように詰め込み過ぎの講演、私と共著の自分の論文の掲載雑誌名を間違えていた。

バンケット会場に着くまで真っ暗なバスで渋滞と悪路の中を立ち続けて少々気分が悪くなった。それでもIISのお偉方やKenやLuding等との話が弾みバンケット自体は楽しめた。しかし鷹の爪を食べて目を白黒して大変な目に遭ったのは間抜けな体験であった。Joeとは北京の事等を話したが最後に英語の下手さを婉曲に指摘されたのがショック。

1/26: 4日目。
流動層等、粉体研究を始めたきっかけのテーマが中心だったが今はサスペンション同様余り興味を持てなかった。コーヒーブレークを経て、(エクスカージョンをスキップして)Alamに連れられて彼のJawaharal Nehr Centre for Advanced Scientific Researchを訪れた。途中昼食を洒落たレストランで取ったが、ホテル内よりずっと安い。量が多くて食べきれない程であった。

研究所はスラムのような外部と隔絶されており静寂とホテルの様な整備された芝生や草花に囲まれた瀟洒なキャンパスと建物であった。彼のグループの学生3人(実験2人と理論1人)に研究を紹介して貰った後に、彼の研究も簡単に紹介して貰い、こちらの研究も紹介した。来年あたりにそこでGranular Gasの会議を開くつもりとのことであった。環境が良いだけに良い気分で情報交換ができた。Alamが運転手を使っていた事、運転手は戸外でずっと待機していることも印象的であった。彼がよほど良い身分なのかカーストのなせる業か。

皆がエクスカージョンから帰っていないのでぼっち飯は避けられず、仕方なくホテル内のレストランに入った。そこにほぼ食事を終えていたGrayがいたので挨拶をしたら相席して話につきあってくれたのには助かった。四方山話と研究の話を色々したのだが、彼とは4月のオランダ、7月のグラーツでも一緒になる予定であり、オーバーラップが多い。研究は素晴らしいので研究面でもより交流を勧められたらと思う。

全体的には収穫も多く、来て良かったと思う。だからといって研究が進む訳では勿論ないのも問題である。数多い出張とどう仕事を両立させるのかは課せられた課題になる。