本の感想

を簡単に。

 筒井清忠著「近衛文麿教養主義的ポピュリストの悲劇」。著者はとある事情で京大を辞めた元教授だが、流石に力がある。近衛が何故あそこまで人気があってそして何も出来なかったのかを簡潔に分かりやすく解説した好著。近衛自身もそうだが長男の文隆の悲劇(終戦時にソ連に拘束され11年後に獄死)が痛ましい。またポピュリストの近衛に孫の細川や小泉(或いは鳩山も)重ねてみることも可能だろう。

 ローワン・ジェイコブセン「ハチはなぜ大量死したのか」。原題のFruitless Fall - The Collapse of the Honey Bee and the Coming Agricultural Crisis-の方がより内容を正確に伝えている。まずは原題農業がミツバチにかくも依存していることに驚かされた。従ってハチの大量死が食糧危機と直結していることが問題の深刻さを物語っている。この本ではその大量死の原因を探っているのだが、農薬等の複合汚染によってハチが様々なウィルスに冒され、ちょうどアルツハイマーBSEのようになって蜜の採取はおろか帰巣すらしなくなるということのようだ。(最近の携帯電話説は取り上げていないが、それの影響はあっても軽微であろう)。日本ではまだ深刻ではないようだが、この影響がどのように現れるか気掛かりである。