円楽の引退

は寂しい。昔はよくラジオで彼の落語(というより人情噺)を聴いたものだ。大学院博士課程になった頃にテレビを買って堕落して以来、あまり彼の噺を聴く機会はなかったが。ろれつが回らないといっても先代の林家正蔵(彦六)はそういう喋り方で味を出していた。(よく木久蔵が彦六の真似をしているがよく似ている)。我々の年代だと志ん生文楽、先代の金馬)の落語はレコードで聴く他はない。実際に聴いた名人といえば円生、(春風亭)柳橋、小さんといったところである。小さんの「らくだ」とか柳橋の「こんにゃく問答」は面白かったし非常に印象に残っているが最も好きだったのは円生である。彼のこれといった口座は思い出せないがなんとも言えない味があった。

 円楽の人情噺では中村仲蔵が良かった。円楽は円生の落語協会からの脱退につきあわされたのが不幸だったのかもしれない。円生は円窓を後継者にしたいとその頃の新聞に書いてあったが本当のところはどうだったのだろうか。円窓も下手ではないが華がない。円楽のスケールの大きさはないと思う。円楽の割舌が悪くなるにつれて晩年の円生に似てきた気もしていただけに引退は残念である。本人の健康の問題であるから外野がとやかく言っても仕方がないのであるが。